SSブログ

私の技術者人生(10) [技術者人生]

 全社プロジェクトで小型ファンの開発を行なったあと、しばらく、ファン開発から離れることになりました。当時、実用化が進みつつあったコンピュータシミュレーションに本格的に取り組むことになりました。1980年代後半は流体解析の商用シミュレーションソフトが発売され始めた時期で、FLUENT、STAR-CD、STREAMなどの著名なソフトは現在にも引き継がれてきています。
 私はこのような市販ソフトを使用するだけでなく、自社で作る、つまりプログラミングするところにも携わりました。学生時代にプログラミングの経験はあるものの、プログラマーとしての本格的な教育は受けていないので苦労しました。プログラムを作ろうとしたのは、当時の市販ソフトは機能が十分ではなく、私が専門としていたファンの性能評価を行なえるものがなかったからです。かなり専門的なプログラミングで、かつ、大規模な開発になるので関連部署と協力して開発を進めたのですが、結局は十分なものはできなかったように記憶しています。
 当時はシミュレーション技術が急速に進歩している時期であり、自分たちで開発するよりも、ソフトウェアベンダーの開発のほうが速かったのです。自分たちでやり始めて数年経つとある程度のものはできたものの、その時点ではソフトベンダー各社から同等以上の機能を持ったソフトが販売されるようになっていました。
 そこで、自力開発はあきらめて各社のソフトを導入するためにベンチマークすることにしました。ベンチマークしたのは3社で、海外2社、国内1社でした。当時はコンピュータシミュレーションに絶対的な精度を期待する時代ではなく、実際、ファン解析の精度という点では大きな差はなかったように思います。精度が決め手にならないとなると重視されるのは使い勝手です。ファンのような曲面の多い形状を扱う場合、解析のメッシュを作るのが非常に複雑になります。現在はいろいろ便利な機能ができているのですが、当時はメッシュを作るのが大変な手間だったのです。
 それと、もう一つはパソコンで使えるソフト。当然、パソコンの性能は現在と比べると非常に劣っていましたから、流体解析のような科学技術計算は大型計算機やEWSと呼ばれる専用マシンで行なわれることがほとんどでした。ところが、EWSを管理するためにはそれなりの専門知識が必要となり、パソコンの管理とは格段に面倒だったのです。また、価格的にも非常に高価なものでした。
 会社やソフトの名前は変わってきていますが、今でもこの3つのソフトは流体解析の代表ソフトとして残っています。そのうちの一つを選んで社内に導入したのですが、他の2社とも良好な関係を続けることができ、いろいろと情報交換させていただきました。
 こうして、ファンの性能解析をするようになり、試作実験による開発経験とコンピュータシミュレーションによる性能予測というハードとソフトの両面からファン開発を行なうスタイルができてきました。


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。